『レ・ミゼラブル』①ミリエル司教1

 『レ・ミゼラブル』の主人公ジャン・バルジャン。27歳の時、飢えた姉の子どもたちのために一片のパンを盗んだために19年もの間、徒刑場に入れられていた。パンの窃盗で刑期がそんなに長くなったのは5回脱獄未遂を繰り返したから。1815年(ナポレオンがワーテルローの戦いに敗れ、セント・ヘレナ島に流された年)、ようやく刑期を終えて出獄(46歳)。

「子供のころから、母親が生きていたころから、姉と暮らしていたころから、彼は一度もやさしい言葉や、親切なまなざしに出あったことがなかった。苦しい生活をつづけているうちに、彼はしだいに、この世は戦いだ、そして自分はその戦いに負けたのだという確信をいだくようになってしまった、憎悪だけが彼の武器だった。この武器を徒刑場でとぎすまし、出るときはそれをもって出ようと決心した。」(『レ・ミゼラブル』)

 しかし、釈放されても一度徒刑囚の烙印を押された者に世間の目は冷たい。元徒刑囚は、常に通行証を携え(そこにはこう書かれていた。「ジャン・バルジャン、釈放された徒刑囚、・・・19年間服役。5年は押し込み強盗のため。14年は4回の脱獄未遂のため。非常に危険な人物」)、行く先々で身の所在を役場に届けるよう義務付けられている。その風体から怪しく思った住民が役場に問い合わせると、身元がすぐに露見してしまう。そうなると、宿はおろか食事にもありつけなくなってしまう。救いの道はないに等しい。世を呪い、人を恨み、心はかたくなになるばかり。しかし、そんなジャン・バルジャンは一人の司教によった救われる。慈愛の権化のようなミリエル司教。温かな食事と一夜の宿を与えてくれただけではない。司教の家の銀の食器を盗んで逃げだし、翌朝 、憲兵につかまって連れ戻された時も、司教は、食器は自分が与えたのだと言って釈放させてやり、そのうえ、銀の燭台も与え、心の正しい人になるようにと諭す。

「『忘れないでください、けっして忘れないでください。この銀の道具を使って、りっぱな人間になると私に約束してくれたことをね。』

 ジャン・ヴァルジャンはなにかを約束したおぼえなどこれっぽちもなかったので、目を白黒させていた。司教は話しながらその言葉に力をこめていた。彼は一種、荘重な態度でまた言った。

『わたしの兄弟のジャン・ヴァルジャンさん、あなたはもう悪の味方ではありません。善の味方なのです。あなたの魂を、わたしはあなたから買い受けます。あなたの魂を暗い考えや、滅亡の心から引き離して、神にささげます』」(『レ・ミゼラブル』)

 ジャン・バルジャンはこのミリエル司教によって生まれ変わる。ではなぜミリエル司教はそれほどまでに優しい人物だったのか?そこにはフランス革命が大きくかかわっている。

 (連行されたジャン・ヴァルジャンとミリエル司教)TV「レ・ミゼラブル」主演リノ・ヴァンチュラ

(TV版「レ・ミゼラブル」主演ジェラール・ドパルデュー)

(ジャン・ヴァルジャンと姉、その子供たち)

(パンを盗むジャン・ヴァルジャン)

(元徒刑囚ということで、行く先々で冷遇されるジャン・ヴァルジャン )

(ミリエル司教に 大切な客として扱われる ジャン・ヴァルジャン)

(ミリエル司教から銀の燭台を渡され諭されるジャン・ヴァルジャン)

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