ヨーロッパの夏空の下12 ウィーン美術史美術館④カラヴァッジョ「ゴリアテの首をもつダビデ」

 ヨーロッパの美術館を訪れて日本との違いとして感じることの一つが、残酷シーンをテーマにした絵画の多さ。B級作品ではない。超一流有名画家の作品でだ。人間の生首が出る絵画と言えば場面は3つ。①旧約聖書の「ゴリアテの首を持つダヴィデ」②旧約聖書外典の「ユーディットとホロフェルネス」③新約聖書の「ヨハネの首を持つサロメ」 ウィーン美術史美術館にもそれらの有名作品がある。

 まず「ゴリアテの首を持つダヴィデ」。羊飼いの少年ダヴィデは、完全武装の巨人ゴリアテ(身長は6キュビト半=約2.9メートル)を石投げ器一つで倒す。戦いを前に、ダヴィデはゴリアテにこう言う。

「お前は剣や槍や投げ槍でわたしに向かって来るが、わたしはお前が挑戦したイスラエルの戦列の神、万軍の主の名によってお前に立ち向かう。今日、主はお前をわたしの手に引き渡される。わたしは、お前を討ち、お前の首をはね、今日、ペリシテ軍のしかばねを空の鳥と地の獣に与えよう。全地はイスラエルに神がいますことを認めるだろう。」(『旧約聖書』「サムエル記上」17章15節~46節)

 そしてダヴィデの放った石はゴリアテの額を撃ち、ゴリアテは倒れる。

「ダビデは石投げ紐と石一つでこのペリシテ人に勝ち、彼を撃ち殺した。ダビデの手には剣もなかった。ダビデは走り寄って、そのペリシテ人の上にまたがると、ペリシテ人の剣を取り、さやから引き抜いてとどめを刺し、首を切り落とした。」(同上17章50節~51節)

 このテーマの中核は「信仰の力」ということであり、ミケランジェロの「ダヴィデ像」は、戦いをまえにして信仰の力による勝利を確信した若きダヴィデの静かにエネルギーをみなぎらせた姿を形にした。一方 カラヴァッジョは、切り落としたゴリアテの首を持つダヴィデを描いた。このテーマでのカラヴァッジョ作品としては、ローマのボルゲーゼ美術館にあるものが有名。血の滴るゴリアテの首はカラヴァッジョの最後の自画像と言われる。

 (カラヴァッジョ「ゴリアテの首を持つダヴィデ」ウィーン美術史美術館)

(カラヴァッジョ「ゴリアテの首を持つダヴィデ」ボルゲーゼ美術館)

(ミケランジェロ「ダヴィデ」アカデミー美術館)

(ポッライウォーロ「ゴリアテの首を切り落としたダヴィデ」ベルリン絵画館)

(ドメニコ・フェッティ「「ゴリアテの首を切り落としたダヴィデ」ハンプトン・コート宮殿)

(グエルチーノ「「ゴリアテの首を切り落としたダヴィデ」国立西洋美術館)

(オラツィオ・ジェンティレスキ「ゴリアテの首を切り落としたダヴィデ」ベルリン絵画館)

(グイド・レーニ「ゴリアテの首を持つダヴィデ」ウフィツィ美術館)

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