「『永遠の都ローマ』の魅力」カンピドリオの丘④

⑥ピエロ・ダ・コルトーナ「サビ二女の略奪」

 「サビ二女の略奪」は古代ローマの伝説的挿話の1つ。ロムルスはローマを建国するが、女性が一向に移住してこない。そこで彼は計略を用いて近くのサビニの女性を略奪してしう。当然男性たちは怒り、戦いになります。しかし、サビニの女性たちは「親兄弟を失うか、夫を失うか、どちらが勝っても私は不幸になるから止めて」と両者の戦いに割って入る。この「サビ二女の略奪」は多くの芸術家が取り上げている(絵ではダヴィッド、彫刻ではジャン・ボローニャなど)。

 ⑦トンマーゾ・ラウレーティ「レギッルス湖畔の戦い」

 紀元前509年、追放された王政ローマの第7代(最後)の王であったタルクィニウスがラティウム人たち支援を受けて起こした戦争が第一次ラティウム戦争であり、この戦争中の最大の戦いとされたのが「レギッルス湖畔の戦い」。伝説ではカルトスとポルクスの協力でローマが勝利を収めたとされる。

 ⑧「アウグストゥス」

 ローマ帝国の初代皇帝。志半ばにして倒れた養父カエサルの後を継いで内乱を勝ち抜き、地中海世界を統一して帝政を創始し、「パクス・ロマーナ」(ローマの平和)を実現した。

 ⑨「マルクス・アウレリウス帝の騎馬像」

 マルクス・アウレリウス帝は第16代ローマ皇帝。ストア派を代表する哲学者。 五賢帝時代最後の皇帝。学問を好みストア哲学を生涯実践したため「賢人皇帝」と讃えられた。 

⑩グイド・レーニ「聖セバスチャン」

 聖セバスチャンはローマ皇帝の近衛隊長だったが、当時禁制のキリスト教に帰依し、獄中のキリスト教徒を力づけたり、人々を改宗させたりしたために皇帝から死刑を宣告される。彼は無数の矢を射られて放置されるが、瀕死のセバスチャンはある敬虔な婦人によって介抱され(cf ジョルジュ・ド・ラ・トゥール「イレーヌに介抱される聖セバスティアヌス」ベルリン国立美術館)蘇生する。しかし再び皇帝に反抗し、ローマの神々を冒とくしたため撲殺された。 ここにあるグイド・レーニ「聖セバスチャン」は、三島由紀夫が愛したことで有名。自伝的小説『仮面の告白』の中で、中学生の主人公が父親の蔵書中に見つけたグイド・レーニの《聖セバスチャンの殉教》の図版に強く魅了され、その「白い比ひ(たぐい)ない裸体」の輝きに抑えがたい興奮を覚え、初めて「悪習」の挙に及ぶ有名なくだりがある。「聖セバスチャンの殉教」についてはその中で次のよう描いている。 「それが殉教図であろうことは私にも察せられた。しかしルネサンス末流の耽美的な折衷派の画家がえがいたこのセバスチャン殉教図は、むしろ異教の香りの高いものであった。何故ならこのアンティノウスにも比うべき肉体には、他の聖者たちに見るような布教の辛苦や老朽のあとはなくて、ただ青春・ただ光・ただ逸楽があるだけだったからである。」  三島は絵を見て楽しむだけでは満足できず、自らセバスチャンに扮しそれを篠山紀信が撮影(1968年。欧米でも有名な写真)。

⑪「コンスタンティヌス大帝の頭部」

 大きい。これだけで高さは2.5mある。上目づかいに遠くを見つめる目つきもいい。これは石像だが、銅像の方はもっと目つきがはっきりわかる。この石造、もとは、フォロ・ロマーノの「マクセンティウスのバシリカ」円形のアプス(祭壇)に置かれていたコンスタンティヌスの巨大な座像アクロリトス(ギボン『ローマ帝国衰亡史Ⅲ』によれば、324年以降に造られ、「右手に十字架を捧げもっ」ていたそうである。)の一部。木造の胴体は失われているが、この頭部と手足が現存していて、カピトリーニ美術館の名物となっている。「マクセンティウスのバシリカ」(完成させたのはコンスタンティヌス大帝)は巨大な建造物で、現在残っている遺跡は全体の三分の一以下の側廊の部分に過ぎないが、それでも高さ25mある。中央の身廊は天井の高さ35mだったという。この建造物の柱の一本が、教会建築に転用されている。ローマの4大聖堂の1つサンタ・マリア・マッジョーレ大聖堂の正面広場に立つ円柱(頂上に聖母マリア像)だ。これをみても、「マクセンティウスのバシリカ」の巨大さが想像できる。  コンスタンティヌス大帝は、禁止されていたキリスト教に信教の自由を与えたミラノ勅令(313年)で有名。


 カピトリーニ美術館は、他にも見るべき作品は多いが、ローマの歴史を軸に時代順に追ってみるのも楽しいと思う。

 (「コンスタンティヌス大帝の頭部」石造)

(「コンスタンティヌス大帝の頭部」銅像)

(「マクセンティウスのバシリカ」フォロ・ロマーノ)

(「サンタ・マリア・マッジョーレ教会」聖母の円柱)

(ピエロ・ダ・コルトーナ「サビーネ女の略奪」)

(ダヴィッド「サビーネ女の略奪」ルーヴル美術館)

(ジャン・ボローニャ「サビニ女の略奪」フィレンツェ ロッジア・ディ・ランツィ)

(トンマーゾ・ラウレーティ「レギッルス湖畔の戦い」)

(「アウグストゥス」)

(グイド・レーニ「聖セバスチャン」)

(ラ・トゥール「イレーヌに解放される聖セバスティアヌス」ルーヴル美術館)

(「聖セバスチャンの殉教」モデル:三島由紀夫氏、カメラ:篠山紀信)

(「マルクス・アウレリウス帝の騎馬像」)

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