「『永遠の都ローマ』の魅力」カンピドリオの丘③
「コルドナータ」(傾斜路)を登りきると、そこがカンピドリオ広場。中央の台座の上に置かれているのは皇帝マルクス・アウレリウスの騎馬像(現在はレプリカ)。正面奥の建物は、古代ローマの公文書館(タブラリウム)跡で現在はローマ市庁舎となっている。市庁舎の右側にはコンセルヴァトーリ宮殿、左側にはパラッツォ・ヌオーヴォ宮殿の二つの建物があり、あわせてカピトリーニ美術館として公開されている。1471年に教皇シクストゥス4世が貴重な古代彫刻群をローマ市民へ寄贈したのが起源で、ローマの有力貴族のコレクションを受け入れながら作品の拡充がすすみ、18世紀には現在の美術館の基礎が整備され、一般公開(一般市民に公開された博物館としては世界最古)。ローマ市の歴史と密接にかかわる作品を多く所蔵しているのが特色だが、その代表的作品をあげる。
①「エスクィリーノのヴィーナス」紀元前1世紀の模刻(原作は紀元前5世紀)
ローマの建国者ロムルスはアルバ・ロンガ王国14代目の王ヌミトルの孫だったが、このアルバ・ロンガ王国を建国したのはヴィーナスの孫アスカニウス(父はアイネイアス)である。ヴィーナスは、トロヤ戦争で敗れトロイアを脱出したアイネイアス一家を援助し続けた。
②「カピトリーノのヴィーナス」ローマ時代の模刻(原作は紀元前3~前2世紀)
塩野七海が、『ローマ人の物語(14)キリストの勝利』の中で、「4世紀末に生きていた誰かが、石棺の中にでも隠して、地中深く埋めたのではないか」という仮説を掲げているほど完璧な姿で残っているヴィーナス像。右手で胸を、左手で下腹部を覆い隠そうとしている、いわゆる「恥じらいのヴィーナス」のタイプだが、恥じらいの強調によって裸体であることをさらにいっそう意識させる。1667~1670年に発見され、1752年にこの美術館に移されたとのこと。
③「マルス像」
戦いの暗黒面を象徴するアレスの性格は乱暴、残酷、不実で、ただ自身が戦いを楽しむことばかり考えていたため、他の神々とも仲が悪かった。このアレスがローマ神話に登場する「軍神マルス」と同一視される。ローマ神話の神々はギリシア神話の神々の名前だけを変更したようなものがほとんどだが、マルスに関してはアレスとは違い非常に重要な神とされている。それは、マルスがローマの建国者ロムルスの父親であるため。ローマ地方では、マルスが由来のマルクス、マリウス、マルティヌスなどの男性の名前が、現在でもアレンジされながら受け継がれているようだ。
④「カピトリーノの雌狼」
雌狼はローマ時代(紀元前六世紀後半)のものだが、双子の像は15世紀にフィレンツェの芸術家ポッライウォーロによって付け加えられた。
⑤ルーベンス「狼に育てられるロムルスとレムス」
左の子供は狼の乳を飲み、右の子供にはキツツキが3粒のサクランボを運んでいる。絵の右上は兄弟を発見した羊飼いで、左上の男性は川の精霊。女性は川の妖精とも、生母のレア・シルウィアともいわれている。樹の右側の向こうから羊飼いらしき男が覗き込み、思わぬ発見に、手を広げ、 口を空けて驚いている。ルーベンスのローマへの思いが込められ、彼が死ぬまで手放さなかったそうだ。
(カンピドリオ広場)
(「皇帝マルクス・アウレリウスの騎馬像(レプリカ)」カンピドリオ広場)
(「エスクィリーノのヴィーナス」カピトリーノ美術館)
(「カピトリーノのヴィーナス」カピトリーノ美術館)
(「マルス」カピトリーノ美術館)
(雌狼に育てられるロムルスとレムス)
(ルーベンス「狼に育てられるロムルスとレムス」カピトリーノ美術館)
0コメント