「夏の風流 金魚玉」
愛媛県松山市の道後温泉に、『瓶泥舎びいどろ・ぎやまん・ガラス美術館』という日本屈指の美しい和ガラスをそろえた美術館がある(2011年4月オープン)。現在、「日本の色と形 いざ見参! びいどろに宿る魂」を開催しているが、HPにこんな説明が出ている。
「「びいどろの神髄」とは、華やかさの中にも侘び寂びを感じる「色彩」と、江戸文化を背負った生活様式からくる「形」であると瓶泥舎は考えます。日本では古来、暮らしの中に多彩な色合いや自然のモチーフを取り入れ、その豊かな情趣を愛でてきました。日本のガラス製法の中で自然素材や天然鉱物から生まれた独自の色彩は、光を通すガラスでしか表現できない魅力に満ちています。吹き竿の先に溶けたガラスを巻き取り、息を吹き込む「宙吹き」は、息を吹き込んだ瞬間に生み出された偶然の美ともいえるでしょう。・・・」
この美術館の展示物で特に気に入っているのが「金彩波頭紋(きんさいはとうもん)金魚玉」。「金魚玉」とは、江戸時代に金魚を買ったとき、金魚を入れて持ち帰るためのガラス製の容器で、それを棚の上に置いたり、軒に吊るしたりして金魚を楽しんだ。「金彩波頭紋金魚玉」は、ガラス玉を海に見立て、金色の波間を優雅に泳ぐ金魚を楽しむという趣向の一品。吊り紐も、色ガラスのビーズと紫水晶でできており、とても庶民が手に入れられる代物ではないが、そこに金魚が泳ぐ姿を想像するだけでも風流な気分を満喫させてくれる見事な作品だ。
江戸の人々が金魚を楽しんだ様子は多くの浮世絵に描かれている。今と大きく異なるのは、まず容器。木箱や陶器。当然だが、横からは見えず、上から見て楽しむ。金魚の「上見」(うわみ)と言う。今でも金魚の品評会は上からの美しさを主として審査するようだ。らんちゅう等は上から鑑賞することで その美しさが発揮されると言われている。ガラスの水槽に入れて横から観賞するのが、現在の主流になっているが、「上見」によって新しい楽しみ方ができるように思う。 金魚玉について調べていて、おもしろい絵にも出会った。神坂雪佳(せっか)「金魚玉図」だ。軒先に吊るされた金魚玉のなかから金魚がこちらを見ている、という構図。夏の風物詩の金魚ひとつとっても、楽しみ方はいろいろ。自分なりの楽しみ方を発見したいものだ。
(「金彩波頭紋金魚玉」 瓶泥舎びいどろ・ぎやまん・ガラス美術館)
(歌麿 「金魚玉を持つ女」)
(鳥高斎栄昌 「若那屋内 白露」)
(国貞「俳優見立夏商人 金魚売り」 )金魚玉が桶に吊るされている
(神坂雪佳 「金魚玉図」 )
(歌麿 「金魚遊び」) 金魚を捕まえようとしてたしなめられる娘
(豊国 「二五五四好今様美人 金魚好」)
0コメント