「2021春 京都・奈良の桜」1 御室桜(おむろざくら)
これまで行きたいと思いながら一度も足を運んだことのなかった御室仁和寺。右京区御室にある真言宗御室派の総本山で、世界遺産にも登録されている。その歴史は古く平安時代に遡る。そもそも仁和寺は、光孝天皇(830年―887年)が勅願寺として仁和2(886)年に建て始めたがその翌年に、天皇が崩御。その意思は息子の宇多天皇(867年―931年)へと受け継がれ二年後の仁和4(888)年に完成。宇多天皇はこの御室の地で親政を行ったことから「御室御所」とも称された。また昌泰2(899)年には宇多天皇が東寺で受戒した後に仁和寺に入って法皇を名乗り、以後、明治にいたるまで皇室にゆかりの人物が住職を務める「門跡寺院」として最高の格式を誇っていた。
ここは京都でもっとも遅咲きの桜、御室桜(おむろざくら)で知られる。中門をくぐった先の西側一帯に、200本ほどの御室桜の林がある。樹高が低く2〜4m。花びらは大ぶりで色も濃く、根元から枝分かれし、 目線の高さで鑑賞できる。別名「お多福桜」。
「わたしゃ お多福 御室の桜 はなは低うとも 人は好く」
花が低い=鼻が低い、と掛けて、お多福=鼻が低い女性、としたのだ。あいにくの雨だったが、雲のように広がる満開桜を至近距離で楽しむことができて、見ごたえ充分。背丈が低いのは、桜の下に硬い岩盤があるため、根を地中深くのばせないためと言われていたが、最近の調査で岩盤ではなく粘土質の土壌であることが解ったそうだ。
この御室桜、1696年(元禄9年)の伽藍再建(仁和寺も応仁の乱【1467年―1477年】によって全焼の憂き目に遭い、現在見られる伽藍が整備されたのは江戸の寛永年間【1624年―1644年】)の折りに植えられた。江戸時代の案内本「都名所図会」に、花見の様子が鳥瞰図で紹介されるなど、古くから桜の名所として親しまれてきた。 御室の桜が咲くと、京都の春も終わりを迎えると言われているそうだ。
貞信「都名所之内 御室任和寺花盛」
『都名所図会 御室仁和寺』
麻田辨次「御室桜と五重塔」
徳力富吉郎「御室の桜」
2021年4月4日 仁和寺 御室桜
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