「『パリの宝石箱』サント・シャペル①」

 彫刻家高田博厚。高村光太郎に師事し、その後戦中戦後の20年間にわたってフランスに滞在。ロダンに学び、ロマン・ロランとも交遊のあった人物。その彼がよく引用した言葉がある。

「何をおいても、サント・シャペルを見るがよい。あそこにこそフランスの精神と夢がある」

 「聖なる礼拝堂」サント・シャペル。上下二層からなっていて、聖母マリアに捧げられた低く暗い下堂(王宮スタッフのための礼拝堂)から中に入る。この礼拝堂のすぐ両脇隅に二本の細い曲がりくねった石の階段があって上階へみちびく。上堂に足を踏み入れた時の感動は、とても自分には表現しきれない。フランス文学者田辺保の『フランスこころの旅』から引用する。

「一歩、外へ足をふみだしたとたん、わっと光がおそってくる。燃え狂った光のただ中へつき出されて、目まいを禁じえまい。サント・シャペルが八百年をへだてて、私たちにまで伝え残しておいてくれた神秘の饗宴の場はまさにここにそなえられていた。上部礼拝堂、聖ルイ一族の祈りの場は、ここであった。さしもの大革命の狂気沙汰も、このフランス国内で極美のステンド・グラスには手をつけることができなかった。入口ポーチ上のばら窓を別にして全部で十五枚のたて長の窓に、それぞれ二枚のアーチ形の枠内ごとに、赤色を主とした焼絵ガラスがはめこまれ、全体は強烈な光彩の洪水となって私たちにいちどきに、降りかかってくるのである。ここで、嘆声をあげぬ見物客はひとりもいまい。私たちもしばし、ここに、こうこうと照り輝く聖なる灯にこの身をさらして、たたずみ、ただ黙し、この光の波動にゆさぶられていようではないか。」

 描かれている聖書の場面は1134、ステンドグラスの総面積はなんと618㎡。ステンドグラスは、文盲者用の「聖なる書」であり、なによりも神の属性である光の神秘的表現であった。

「 すべての人を照らすまことの光があって、世に来た。彼は世にいた。そして、世は彼によってできたのであるが、世は彼を知らずにいた。」(『新約聖書』ヨハネ福音書)

「 神は光のうちの光」(聖アウグスティヌス)

「 神は光、神の子も光、精霊も光」(聖アンブロジウス)

 このサント・シャペルを建設したのは聖ルイと呼ばれるルイ9世。彼は何の目的でサント・シャペルを建設したのだろうか。

(「サント・シャペル」ステンドグラス①)

(「サント・シャペル」ステンドグラス②)

(「サント・シャペル」ばら窓)

(「サント・シャペル」北ファサード)

(「サント・シャペル」西ファサード)

(「サント・シャペル」南ファサード)


0コメント

  • 1000 / 1000