「ユリウス・カエサル ~リーダーの条件~」①

 ようやくカエサルの魅力を語る時が来た。ナポレオンの没落・失脚の原因を考えながらも常に比較対象して考えていたのは勝海舟とともにカエサル。好きな言葉を3つ。

「自分は自身の考えに忠実に生きたいと思う。それは、他人も同様だろう。だから、他人の生き方も認める。そうして、敵が私に再び刃を向けることになったとしても、それは仕方ない。そのように生きることが私の願いだから」

「人間ならば誰にでも、現実のすべてが見えるわけではない。多くの人は、見たいと欲する現実しか見ていない」

「人間とは噂の奴隷であり、しかもそれを、自分で望ましいと思う色をつけた形で信じてしまう」

 塩野七生はこう評している。

 「仕事面ではストイックでも、私生活ではエピキュリアンであった」

 「愛しはしても溺れることはなかった」

 「失敗はしても即座に挽回する」

 「冷徹ではあったが、冷酷ではなかった」

 自分が何よりカエサルに惹かれるのは、生涯を通じて彼を特徴づけた次の点。

 「絶望的な状態になっても機嫌のよさを失わなかった、楽天的でいられた」

 自分に対するゆるぎない自信、過去に捕らわれずに未来に目を向けるポジティブシンキングなくして生まれない姿勢だが、それをもたらしたのは第一にカエサルが幼少年期に受けた母アウレリアからの満身の愛情。他人や社会、世界への基本的信頼感をもたらしてくれるのは他者からの愛情なのだ。

 退職して真っ先にやりたかったのは、カエサルの魅力を明らかにし、自分らしく表現し、今の日本に必要なリーダー像を打ち出すこと。「ひだまり歴史講座」(全10回、平成30年4月~平成31年3月)の第1回のテーマに「ユリウス・カエサルの指導力」を選んだのもその想いから。少しずつカエサルの魅力を語っていきたい。

(「カエサル像」ローマ ヴァチカン美術館)

(「カエサル像」ウィーン美術史美術館)

(「カエサル像」ナポリ国立考古学博物館)

(ニコラ・クストゥ「カエサル像」ルーヴル美術館)

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