ボルゲーゼ美術館の魅力①

 美術館は、作品自体を見る楽しみはもちろんだが、それぞれの作品がそこに置かれるに至った経緯を知るのも面白い。ルーヴル美術館最大の絵画と言えば、ヴェロネーゼの「カナの婚礼」。縦6.77m、横9.94mという巨大な絵画だが、もともと置かれていたのは、ヴェネツィアのサン・ジョルジョ・マッジョーレ島のベネディクト会修道院食堂(サン・ジョルジョ・マッジョーレ聖堂は、ルネサンスを代表する建築家パラーディオの作で、ファサードが実に美しい)。これをパリに持ち去ったのは、ヴェネチアを征服したナポレオン。1799年にパリに運ばれた「カナの婚礼」は、1793年に開館したルーヴル美術館に収められた。

 ではボルゲーゼ美術館の収蔵品の母体はというと、1605年に教皇となったパウルス5世の甥のシピオーネ・ボルゲーゼのコレクションである。カラヴァッジョやベルニーニに代表されるバロック美術と、ラファエロやティツィアーノに代表されるルネサンスの素晴らしい作品の数々からなる。特にカラヴァッジョ作品は6点ある。これらをシピオーネはどのように収集したのか?直接カラヴァッジョから入手したのは、「執筆する聖ヒエロニムス」のみ。その他は、ときには叔父の教皇の権力を利用してかなり悪どい手段を用いたようだ。例えば「病めるバッカス」と「果物籠を持つ少年」。カラヴァッジョが一時その工房にいたカヴァリエール・ダルピーノが所蔵していたのだが、シピオーネはダルピーノを脱税の嫌疑で逮捕させ、そのコレクションを没収したのだ。美の女神は魔性の力を秘めたヴィーナス。美の魔力に取りつかれた人間の恐ろしさもボルゲーゼ美術館は教えてくれる。

(ボルゲーゼ美術館)

(ヴェロネーゼ「カナの婚礼」)

(サン・ジョルジョ・マッジョーレ島)

(サン・ジョルジョ・マッジョーレ聖堂)

(シピオーネ・ボルゲーゼ枢機卿)

(ベルニーニ「枢機卿シピオーネ・ボルゲーゼ」)

(カラヴァッジョ「果物籠を持つ少年」)

(カラヴァッジョ「果物籠を持つ少年」部分)見事な静物画描写

(カラヴァッジョ「病めるバッカス」)カラヴァッジョ最初の自画像


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