トロイア戦争最強の勇者アキレウスの「アキレス腱」

これはルーベンスのデザインのタピストリーだが、何を描いているのか?赤子の足をつかんで水につけているのは女神テティス、そして赤子は?やがてトロイア戦争におけるギリシア軍最強の勇者となるアキレウス。では、母テティスは何をしているのか?アキレウスの母は女神だが、父は英雄(人間)ペレウス。だから、二人の間に生まれたアキレウスは神と違って不死ではない。母メティスは息子の不死を願って、冥界を流れるステュクス河(この川の水に浸すと不死になれるとされた)にアキレウスを浸した。これは、その場面を描いた絵である。しかし、踵を持ったまま水につけたため、踵の一部だけが水につからず、そのためアキレウス唯一の弱点となった。これが「アキレス腱」の語源である。これを狙って弓で射殺したのはパリス。なぜパリスは、アキレウスの弱点を知りえたのか。教えたのは、すべてを知るアポロン。アポロンは、トロイア軍の最強の勇士ヘクトールをこよなく寵愛していた。しかし、アキレウスはそのヘクトールを殺しただけでなく、遺骸を馬車で引きずり回し辱めた。アポロンが怒ったのも無理はない。しかし、アキレウスがそのような行為に出たのも、無二の親友パトロクロスをヘクトールに殺されたから。人間の暴力の連鎖に神も拍車をかけるギリシア神話の世界。

トーマス・バンクス「アキレスを川に浸けるテティス」 ヴィクトリア&アルバート博物館

(ルーベンス「アキレウスに矢を射るパリス」ボイマンス・ヴァン・ベーニンゲン美術館)

パリスに「アキレス腱」を教えるアポロンもちゃんと描かれている。頭の光がなければ、女神の様なアポロンだけど。

(フランツ・マッチュ「トロイの門前でヘクトルの遺体を引きずり回すアキレス」ケルキラ島のアヒリオン宮殿 )

0コメント

  • 1000 / 1000