ヴィーナスの武器「ケストス」

 最初の絵の人物はだれか。女神ヘラと大神ゼウス。それぞれの聖獣である孔雀と鷲がちゃんと足もとに描かれている。場面は、ヘラが夫ゼウスを誘惑しているところ。ヘラの胸の帯に注目。結ばれている帯は、愛と美の女神ヴィーナスの持ち物「ケストス」。どんな男も自分の虜にしてしまう魔法の武器。気位の高いヘラが、浮気を繰り返すゼウスの心をつかむためにする哀しいまでの女ごころ。2番目は、ロレンツォ・ロット「ヴィーナスとキューピド」。言われなければ気づかないかもしれないが、ここにもケストスは描かれている。おもしろいのは、3番目の絵。エルミタージュ美術館にあるジョシュア・レノルズの「ビーナスの帯を解くキューピッド」。ヴィーナスだって、眠ってしまえば男を誘惑する必要なんかない。だから、眠る前には帯を解くのだ。それにしても、このヴィーナスのなんとも蠱惑的な表情がたまらない。ジョシュア・レノルズで大好きな作品は、これとは全くと言っていいほど対照的な敬虔な絵「「幼きサムエル」(最後の絵)。旧約聖書の一場面を描く。

 (サムエル記上 3章10節)

 「主は来てそこに立たれ、これまでと同じように、サムエルを呼ばれた。『サムエルよ。』 サムエル

 は答えた。『どうぞお話しください。僕は聞いております。』」

ジョシュア・レノルズ、詳しくは知らないがこの2枚の絵だけで自分にとって記憶に残る画家。

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