モーツァルトと究極の自己教育力

8歳で最初の交響曲を作り、オペラも11歳で作曲。亡くなった年は、肉体的精神的疲労の中で「レクイエム」の作曲を続けながらオペラ「皇帝ティートの慈悲」、「魔笛」をふくめ36曲を作曲。まさに天才のなかの天才。しかし、それだけではモーツアルトは自分のような凡人にとってただ感嘆して憧れるだけの別世界の人間で終わってしまう。凄さとともに親しさを感じさせ、人生が生きるに値するものだということを語り続ける音楽を生み出したモーツァルトの天才の秘密をずっと知りたいと思っていた。ようやくわかりかけてきたのは『モーツァルト 天才の秘密』(中野雄 文春新書)の次の一節を読んでから。「モーツァルトは、群百の音楽家に比して、百倍も千倍も努力した人であった。ただ、彼はその″努力″を「つらい」とか、「もういやだ」と思わなかっただけの話である。・・・修学の途次、「苦しい」という感情を持たなかった筈はない。しかし彼の場合、学習によって新知識や従来以上の技量をわがものにする喜びが、常に苦労するという気持ちを上廻った。向上の結果得られる歓喜が味わいたくて、彼は労苦を労苦と感じなかったのである。」モーツァルトがぐっと身近な存在になった。教育の最終目標は、教育が不要な人間を育成すること、すなわち自己教育力を身につけさせることだが、そのイメージ、最終目標が少しだけ見えてきた。

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